「道徳なき経済は犯罪である 経済なき道徳は寝言(戯言)である」
これは二宮尊徳(金次郎)が語ったとされている言葉です。
冒頭にこの言葉をご紹介させていただいたのには、理由があります。
少し恥ずかしいところもありますが、私が感じた思いを包み隠さず話してみたいと思います。
介護事業に特化することになったのは、ある経営者様とのお話がきっかけでした。
ケアマネもされている経営者様と話をしていた時のことです。
とてもお疲れの様子でしたので、気になって訊いてみました。
「ずいぶんお疲れの様子ですけど、何かあったんですか?」
「そうなのよ~、ちょっと聞いてくれる?」
何でも昨夜、独居の利用者様の救急搬送に同乗された、とのこと。
なかなか搬送先が決まらず、やっと受け入れてくれる病院が見つかりました。
しかし、その病院でも「熱が下がったので(それでも38℃)帰ってください」と言われてしまった。
なんとか懇願して、主治医のいる病院に電話してもらい、その病院までタクシーで移動し、それからまた検査。
当直が主治医ではなかったので「入院目的の夜間来院ですか?」と嫌味も言われたそうです。
やっと病棟のベッドに寝てもらったのが夜中の24時。
そして、今日も普段どおりに仕事をしている。
「これで1円にもならないのよ。おかしいとは思うけど、仕事だし、放っとけないしね」と何気なくおっしゃっていましたが、他の業界では聞いたことがありません。
「1円にもならない」ことを「仕事」として当たり前のようにしている。
いくら「放っとけない」にしても、ありえないことです。
この一言がきっかけで、"介護業界"に携わっている人たちに興味をもちました。
いろいろと話を訊いていると、こんな経営者様もいらっしゃいました。
デイサービスから、真冬に裸足で出て行ったおばあちゃんを3時間近く探し回った。
見つけて声をかけると、「着いてくんな、アホ!!」と大きな声で叫び、物凄い力で突き飛ばされる。
幹線国道を信号を無視して横切ったり、危なくてしょうがなかったけど、何とか追いついた。
これ以上は、利用者さんの体調が壊れてしまう。
抵抗されるのを承知で、後ろから抱きつき、何とか捕まえた。「ギャー!助けて!!」事情を知らない周りの人は、当然びっくりして振り返りますが、そんなことには構っていられません。
経営者様も必死でしたが、そのおばあちゃんも必死です。
顔を殴られ、爪で引っ掻かれ、足で蹴られ、すさまじい抵抗を受けたそうですが、徐々に力も弱々しいものになっていきます。
すると、そのおばあちゃんは泣き出しました「お父さん、助けて...」「あんな怖いところ、行きたくないよ...」。
経営者様も泣き出してしまいました。道路の真ん中で、二人で抱き合いながら、おいおいと泣いていたそうです。
そのとき経営者様は、こう感じていたそうです。
「大好きなお父さんと離され、いきなり訳のわからないところに連れてこられ、やっとの思いでそこから逃げ出してきたら、今度はこんな見ず知らずの男に追いかけられ、あげくの果てに後ろからおさえられて自由を奪われて、、。
○○さん(おばあちゃん)にしたら、怖くてしょうがないのは当たり前だよな...。
俺は、利用者さんにこんな思いをさせるために、この仕事を始めたのか...」そう思うと、情けなくて涙が止まらなかったそうです。
ただ、そこで奇跡が起きました。
経営者様が泣いているのを見て、今まで泣いていたおばあちゃんが「泣いたらアカンで、いい大人なんやろ」と経営者様の涙と鼻水を(素手で)拭いてくれ、(その手で)頭を撫でてくれたそうです。
このことで、おばあちゃんは落ち着きを取り戻し、いつもの明るいおばあちゃんへ戻っていかれたそうです。
「その時は、○○さん(おばあちゃん)の"心"じゃなく、"行動"だけを見ていたんちゃうか、って思うねん。
他の利用者さんにも迷惑がかかるし、早く落ち着いて欲しいって。
別の言い方をすると、○○さんに"落ち着いて欲しい"っていうこっちの一方的な思いばかりを押し付けてしまって、肝心の○○さんの気持ちが後回しになっていたことに気がついたんや。
利用者さんの"心"に眼を向けんと、利用者さんとの共感はないと思う。
共感がないところに、安心も信頼もないやろ」
その経営者様は、こうおっしゃいました。
私は、頭をハンマーで殴られる思いでした。
この方に限らず、いろいろな経営者様からお話を訊く機会をいただきましたが、どれも、とても私には真似のできないような、強い思いのいっぱい詰まったお話でした。
私の祖母も介護サービスを利用していました。スタッフさんは、例外なく笑顔で接してくれていました。
「笑顔の下には、こんな思いが隠されていたんだ...」
そのときは、まったく気づきませんでした。
恥ずかしい話ですが、社会保険労務士という仕事を通して、経営者様やスタッフの皆様と接するときも、そんなことは考えもしませんでした。
「果たして私はそこまで真摯に仕事に取り組んでいただろうか...」
穴があったら入りたい気持ちでいっぱいでした。
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しかし、そんな経営者様も、そんなに多くの報酬を得ているわけではありません。
これだけ尊く高い思いを持ち、社会に貢献しているにもかかわらずです。
繰り返しになりますが、
「道徳なき経済は犯罪である 経済なき道徳は寝言(戯言)である」
です。
もちろん、道徳心のない「とにかく儲かればなんでもOK」というような経営は、論外です。
しかし同時に、適正な利益というものも必要だと思うのです。
「いいの、いいの。私は年収300万円もあれば、充分生活していけるから」
こんな風におっしゃる経営者様もいらっしゃいます。
でも、やはり私はこれではいけないと思います。
尊く高い志(こころざし)が、"経済なき道徳"であってはいけないと思うのです。
尊く高い志(こころざし)を持って社会に貢献している介護事業所だからこそ、きっちりと利益をあげていかなければいけないと思うのです。
もし適正な利益をあげていけなければ、後には誰も続きません。
それでは介護の火が消えてしまいます。
ほとんどの介護事業所は"道徳心のある経済(事業)"を実践されています。
微力ながら私たちは、介護事業の経営者様の"経済(適性利益)のある道徳(社会貢献)"実現のお手伝いをさせていただこうと決意しました。
私たちにできるバックアップに全力で取り組むことで、介護事業の経営者様に介護事業に専念していただき、きっちりとそれに見合う適性利益を得ていただく、そのことが地域や社会への貢献になると考えています。
また、それこそが私たちの存在意義だと思っています。
介護事業所の発展が、地域の安らぎになる
介護事業所の発展のために、私たちにできることを全力でやる
まだまだ未熟なところも多い私たちですが、少しでも皆さまのお役に立てるようがんばって参ります。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。
長い文章にもかかわらず最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
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